味噌汁をつくる。
それから自室にこもる。
すると、彼女が部屋に来て、「いただきます」と言う。
彼女がパートから帰ってくる。
ぼくは野菜炒めとか、鍋とか、夕食をつくっている。
彼女のパソコンの前に、できた料理を置く。
ありがとう、と言われる。
時には「いつもいつもありがごうございます」などと言われる。
なんだか、くすぐったい。
いちいち、そんなこと言わなくてもいいよ、などと思う。
でも、これ、だいじなことだな、と、しみじみ思う。
ありがとう。
これが、ぜんぶなんじゃないか。
彼女に言いたいことの、僕のぜんぶなんじゃないか。
もちろん、彼女だけに限定の話じゃない。
今まで、彼女の時間をともにしてきた、いろんな人── ダンナさんとか(彼女はまだ事務手続き上、結婚している。ぼくとはいわば「不倫」関係?だ)、その前の彼氏さんとか、親とか友達とか── 彼らがいなければ、今の彼女もいないわけで。
ぜんぶ、ひっくるめて、どうしたところで「ありがとう」なのだ。ほんとに。
ぼくにしたって、前の妻とか、一人娘、友達や、いろんな人がいてくれて、今に至っている。
やっぱり、ありがとう、としか言えない。
ほんとに、ありがとう、なのだ。