創作と日常と

書いた「作品」らしきもの、また日常のこと、思うこと等々。

童話、ふたつ。

 ひなたのお星さま

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 春。やわらかい、あたたかい陽射ひざしがそそぎます。
 家の縁側えんがわで、おばあちゃんとひなたぼっこをしていた太郎くんは、陽射しの中に、キラキラしたものが浮かんでいるのを見つけました。


 じっと、見ていると、上に向かって、ゆっくり上っているようです。
 (どこへ行くんだろう)不思議におもいながら、見ていました。それは、夜空に、きらきら光る、星のようでした。
 「これ、なあに?」

 太郎くんは、指をさして、横に座っていたおばあちゃんに、たずねました。
 おばあちゃんの座っていたところからは、見えませんでした。

 おばあちゃんは、太郎くんのそばに来て、太郎くんの顔に近づけました。


 太郎くんは、おばあちゃんにも見えてほしくて、いっしょうけんめい、しんちょうに、キラキラ光るものを指さしました。
 「ああ」やっと、おばあちゃんにも、見えたようでした。


 「これは、ほこりだよ。さっき、おふとん、上げたでしょう。ふとんとか、ようふくに、ついているのよ。おそうじ、しないとねえ」少し、がっかりしたように、おばあちゃんは言いました。
 「おそうじしたら、なくなっちゃう…」太郎くんが悲しくなって言いました。


 おばあちゃんは言いました、「なくならないよ、ほこりは、いーっぱいあるんだから」
 太郎くんが嬉しくなって笑うと、おばあちゃんも嬉しそうに笑いました。

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 かんがえる太郎くん

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 おばあちゃんと太郎くんは、こたつに入って、テレビを見ていました。
 テレビは、昔日本がした、戦争せんそうのことをうつしていました。


 太郎くんは、どきどきした、へんな気もちになって、
 「どうして、戦争をしたの?」おばあちゃんに、たずねました。


 おばあちゃんは、しばらく考えてから、言いました。「土地っていうのを、ほしかったんだとおもうよ」
 「?」
 「日本っていう国は、ここからここまで、って、あるでしょう。その土地を、もっと大きくしたかったんだろうねえ」


 太郎くんは少し考えて、また言いました、「でもどうして、戦争なんかするんだろ」
 考える太郎くんを見て、おばあちゃんは嬉しそうでした。
 おばあちゃんの嬉しそうな顔を見て、太郎くんは嬉しくなりました。


 それから太郎くんは、考えるふりをするようになりました。おばあちゃんに、嬉しくなってほしかったからです。
 でも、おばあちゃんは、嬉しそうにしてくれません。


 (ふりじゃ、だめなんだ。ほんとうに、考えないと、だめなんだ)太郎くんは思いました。
 ところが、自分じぶんが考えるふりをしているのか、ほんとうに考えているのか、太郎くんには、よくかりませんでした。
 それから、太郎くんは、真剣に考えるようになりました。