創作と日常と

書いた「作品」らしきもの、また日常のこと、思うこと等々。

平和な4人

 あなたに愛人がいたとする。彼女は、あなたを愛し、あなたも彼女を愛している。
 彼女には夫がいる。あなたにも妻がいる。しかし、おたがいに、愛人がいることを隠さない。とてもオープンな関係だ。
 あなたは、自分の妻が、愛人とつきあい始めてから、生き生きとしている姿を見る。


「わたしは、愛する2人の男から愛されている」そう彼女が思うことが、彼女の生活のすべてを輝かせている事実を見る。
 あなたは、その彼女を、心から祝福する。
 彼女は彼女で、あなたに愛人ができて以来、あなたが生き生きとしていることを、喜んでいる。

「今度、4人で飲みに行きましょう」
 あなたは笑って同意する。


 愛人のふたりは、それぞれ、かしこまっている。自分は妻でない、夫でないという意識が、彼らを萎縮させている。罪の意識もあったろう。
 しかし、あなたがた夫妻は、心から幸せそうだ。
「きみから見て、ぼくはどう思う?」
「そうそう、このヒト、そういうところ、あるわよね」

「えーっ、わたしには、そんなことしてくれたことないよ」
「いや、おれ、このヒトの前ではこうなるんだ。だって…」


 次第に打ち解け、その場は嘘・いつわりの一片もない、自己欺瞞もない、やさしい、すべてを包み込む空気にあふれている。
「じゃあ、またね」
「うん、ありがとう」
 4人、心からの笑顔で店を出る。それぞれ、まるで明日からの、生きる活力を得たような足取りで。