池田晶子の「人間自身」によれば──
外国の墓地を散策中、墓に様々な言葉、故人の言葉が刻まれていた。
彼女はそれを見ながら歩を進めていると、ある墓にラテン語で「次はお前だ」とあるのを見たという。
「次はお前だ」。
これは凄い。死した者が、のちにこの墓地を訪れる生者すべてに訴える、真実の言葉だ。いや、これ以上の真の言葉はない。
墓に刻む言葉。死にゆく者が、生きているあいだに最も云いたかったことを表す。
自分の場合、何だろう、と今まで考えたこともないことを考える。
「世界が平和でありますように」宗教的だ。
「愛こそすべて」ビートルズになってしまう。
「この世は地獄」
「心に平和を」
「ひとりひとり」
「明けない夜もある」
「楽しみました」
「ものの弾み」…
私が生きている間に言いたかったことは何だろう?