創作と日常と

書いた「作品」らしきもの、また日常のこと、思うこと等々。

スピリチュアルな歯科医

家から歩いて25分ほどの所に、一風変わった歯医者がある。家の近くにも4、5軒あるのだが、通り越して、ぼくはそこへ行く。 その歯医者を知ったのは、ホームページからだった。近くに良さそうなのはないかと検索していて、行き当たったのだ。 「ワンネス」と…

スナックにて

ぼくは、引きこもる前、働いていた職場で親しくなった人に、いろいろな未知の場所へ連れていってもらった。「キャバクラ」という場へも、このとき初めて行ったが、特に面白いとも思わなかった。チャイナ・ドレスとか着た女の子が隣りに座って、ただ、話をす…

立たせていたもの

とある一軒家の、キッチンにある床下収納。 女は、それを大切にしていた。自分の全存在が収められる、格納庫のように。 結婚して3年目になるが、仕事一筋の夫は全くキッチンに立たず、家事はすっかり妻まかせだった。彼は、「分業」こそムダのない、効率良く…

「オレは生きるのはへただけど、死ぬのはうまいと思う」

東由多加(作家の柳美里さんの旦那さん… 結婚してなかったはずだから、パートナー?)の言葉。 YouTubeで下田逸郎を聴いていたら、ひょんと「次の動画、東京キッドブラザーズ」とか出てきて、おや、と思い観た。 熱い人だったようだ。 僕が生まれる前の時代…

カラオケボックス

女と男は、カラオケボックスに入った。男にとって、初めてのカラオケだった。 この二人、どちらかといえば、女のほうが、男に惚れているようだった。それを感知していた男は、女の自分に対する好意が薄まらぬよう、デートのたびに努力していた。(なるべく、…

オレンジ

「ねぇきみ、ひとりで空想しているうちは楽しかったねえ。でも、飽きちゃったね。せっかく、ふたりになれたのに、飽きちゃったね。実際につきあって、恋人どうしになったりしたら、もうダメだね。ひとりで、十分幸せだったんだよね。でもタイムマシンで戻っ…

秋の終わり

この夏は、恋をしなかった。 もう、今までにいっぱい恋をしたし、もうあんな思いに身を焦がすこともない。そう思うと、女は淋しい気がした。出逢いがないということは、別れもなかった。 際立って何の変化もない、この平坦なのっぺりした道を、来る日も来る…

幸福

「わたし、ほんとうに幸せなのよ!」 彼女がキラキラして言う、「幸せなのよ、幸せなのよ!」「何が幸せなんだい?」彼が問うた。「何も感じないことが幸せなのよ!」彼女が答えた。 彼は、それまで毎晩、愛の奉仕に一生懸命であった。 どうしたら彼女を歓ば…

ふたりのうつつ

「わたし、もう死んでいるのよ。」「わはは。馬鹿言っちゃいけない。死んでる人間が、死んでいるなんて言えるかい。」「あなた、生きている、って、言えるの?」 「あったりまえだろう、生きてるから、生きている、って言えるんだ。」「わたし、死んでいるか…

「わたし達」

わたしは、誰かをほんとうに愛したことがない。だから誰かをほんとうに憎んだこともない。 わたしは、自分の中が賑やかだから、静かな人を好きになる。 わたしは、楽しいふりができないから、みんなといても楽しくない。 寝たふりができないから、ひとりでい…

愛の巣

愛しているのか、いないのか、分からないまま、男と女はラブホテルへ行った。 駅のそばにある、和風の旅館。ちょっとした旅行気分になる。都内の、どこにでもあるホテルなのだが。 男は、さっき女に声を掛けたばかり。 たまたま通りすがって、彼も退屈だった…

火と灰

火が煙草に言う、「お前は、私なしでは使い物にならないな」 煙草が答えて、「君は、僕なしでは煙りになることもできないね」 燃え尽きた火が言う、「私は何のために燃えていたのだろう」 尽きた煙草も灰になった。 ふたりとも死んでしまったが、その後、あ…

模倣

風のように生きるも、牛のように生きるも、この地上の話。風にはなれず、牛にもなれない。ただ「ように」なれる。「ように」は、なれる。そもそも、「ように」にしかなれないんじゃないか。女のように。男のように。人間のように。〈私〉のように。そうでな…

人生がわからない

と言って、死んでいった、原口統三よ。 困るよ。 それでは、生きてるぼくら、みな、死ななきゃならないじゃないか。

ホントウに愛すること

昨夜は、Nさんから誘われて、ラーメン屋→ 居酒屋→ スナックというコースを辿った。 スナックで、たぶん45、6歳のおねえさん(?)に、訊いてみたのである。「あおいさん、人が人を、ホントウに愛すること、できると思う?」 あおいさんは、2、3秒考えて、「…

ラブホテル

そのベッドは、昔、回っていたという。なぜ回らなければいけなかったのか?一度は、回ってみたかった。いや、回されてみたかった、か。「モーターから火を噴く」という理由で、消防法で禁じられたらしい。燃えるような恋も、ほんとに燃えてしまってはいけな…

出逢う時

たとえば10代のときに出会い、大熱愛をした相手と、20代後半で出会ったとしても、うまくいかないような気がします。 25で出会い、結婚しましたが、40のとき、そのひとと出会っていたら、同じように結婚は、していなかったように思えます。 つまり、今私が出…

晩餐

「ねぇ、死にたいの、あたし」「じゃ、一緒に死のうか」「そうね」「それとも、生きようか」「生きながら、死にたいわ。死にながら生きるのは、もうまっぴら」「… 同じじゃない?」「そう、同じなの。だから、どっちかにしたいのよ」「生きるなら生きる。死…

平和な4人

あなたに愛人がいたとする。彼女は、あなたを愛し、あなたも彼女を愛している。 彼女には夫がいる。あなたにも妻がいる。しかし、おたがいに、愛人がいることを隠さない。とてもオープンな関係だ。 あなたは、自分の妻が、愛人とつきあい始めてから、生き生…

ラブレター

心を込めて、書きました。私は、心を込めてしか、書けませんでした。残念です。あなたへ向けたのに私、自分に夢中になることしかできなかったみたいです。

ねたみ、そねみ、うらみ、嫉妬…

そんな感情から、おかしくなるんだ。 この世も、世界も。 つまりは自分の世界も、他人の世界も。「人間、みんなそうだろう」「人間なんだから」〈人間〉を都合のいいように持って来て、それを盾にして。 自分の感情を守るために。 そして争いが、繰り返され…

ヒト

《私》の感じていることなど、人間の感じていることにすぎない。「自分だけが」なんて、ない。 鳥が飛ぶように、魚が泳ぐように、人が感じること・考えることは、その性能が働いていることにすぎない。 要するに人がやること・言うこと、みな似たり寄ったり…

ドラッグ・ストアで

日常の話。 こないだドラッグ・ストアで買い物をしたら、お釣りを渡された。 そこはまだ機械が釣りを出すのでなく、店員が釣りを渡すのだ。 飛沫ボードの向こう側、二十代ぐらいの女の店員さん。 「〇×円のお返しです」 青いカルトンの中に釣り銭は置かれる…

お脳さんも心さんも

(イメージ) 言うほど、お脳さん、お利口でないよ。 油もん与えて 甘い砂糖、糖分を与えて 気持ち良くなって 気持ち良さ、これを記憶したら またこれを求めて 求められなくなったら、嘆いて 簡単にそうなる では心は? 脳氏が頭にあるとしたら、 心氏は胸… …

あの頃

ウッホウッホと彼らは踊る、火のまわりをボンボコボンボコ、天を仰いで、無心に踊る! 豊作を願い、子宝繁盛、狩猟の成功、血を躍らせて夜空を仰ぎ… 彼らは生かされていることを知っていた、ひとりで生きていないことを知っていた、協力し合い、当然とさえ思…

それに対して

それは人為によって加えられるものではない。生命、宇宙、この世とあの世、その境界線に、人間は立ち入るべきでない! 邪悪なもの、そいつは存在する、哀しいことに。哀れむべき存在だ!そいつとは、どこまでも戦わなければならない? 悲しいことだよ、そい…

この世の話

意識。意識なんだ。生きているという意識によって、生きている。死ぬという意識によって、死ぬ。死がある、生がある。それだけのことだ、この世では。

受容し、受容され

運命は、ある。そいつは、外・のもんじゃない。己、自己のうち・・にあるものだ。そいつに従って生きているということだ。 誰を恨む、何を憎む、羨む、というものではないよ。喜んで、受け容れることだ。既に、受け容れられて・・・いるんだから。この世にホ…

今ここに

よく眠るために一日を暮らしよく死ぬために一生を生きる まわりはまわりわたしはわたし ちがう世界もおんなじ世界おれはおれ おまえはおまえ それでも おんなじとこにいるってこと

心の作用

尊敬と嫉妬。 尊敬も嫉妬も、自分が持っていないものを持っている人の内面に対して、生じる心である。 尊敬も嫉妬も、同じ一葉。 期待と不安。 ドイツの画家、リヒャルト・エルツェの描いた絵に「期待」というのがある。 これは灰色の絵で、暗く、橋の上から…